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FICTION

アタシ、乗り換えるね!

 都営三田線三田駅、上り線のホームでは、神輿を担いだ男たちが酒を煽りながら大声で合唱していた。少なくとも500人はいるだろう。いや、分からない。駅のホームにどれくらいの人数が収まるかは、見当がつかない。
 年末年始のJR東京駅で、一度だけ帰省ラッシュのピークに出くわしたことがある。23番線のホームに上がるための階段も、その100メートルほど手前で、すでに流れは止まっていた。約30分かけてホームまで上がったところ、戻ることも進むこともできなくなって、アタシは目を閉じて寝てしまった。
 都営浅草線からこの三田線へ乗り換えるために、浅草線を降りて三田線への連絡通路を歩いているとき、アンジェラ・アキの「サクラ色」と似たような旋律が、地鳴りを伴って聞こえてきたのは、アタシの頭がおかしくなったからじゃなかったんだ。男たちが合唱していて、良かった。だって、もしこれが幻聴なりなんなり、そのへんのやばいやつだったら、アタシ、もうどうしたらいいか分かんなくなっちゃうだろうから。

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