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FICTION

かなりすごいドえらい絵画を見たんだけど!

 ちょっと聞いてよ、アタシさっき美術館ですごい絵を見たのよ!
 浅草の雑居ビルの7階にある、なんだか辛気臭い美術館だったんだけどさ、とぐろを巻いた大蛇がこっちをじっと見てる、かなりすごい絵だったわよ!

 なにがすごいって、それはもう、もはや大便じゃん!
 お昼にカツ丼を食べたばっかりで、お腹がいっぱいだったから眠かったんだけど、その絵を見た瞬間、すっと胃腸が軽くなって、眠気なんかもう吹っ飛んじゃった。

 それでもアタシは絵をじっと見つめた!蛇を睨んだ!
 暑くなる美術館内、熱くなるアタシの心。椅子から立ち上がった美術館職員が、アタシの腕を掴んだ。

「すみません、こちらへ」

 アタシは、熱くなった、そしてこわばった身体を、引きずられるようにして美術館のバックヤードへ連れて行かれた。

「すみません、漏れてますよ」

 エレベーターガールが《上へ参ります》という時にしてみせる、あの手のジェスチャーをしながら、職員は私の目をまっすぐ見た。

 そこからの記憶は無く、気がついたら雷5656会館の前で、エレベーターガールのジェスチャーの体勢をとって、仰向けで倒れていた。

 私は上下グレーのスウェットに着替えていた。あれ、いつ着替えたのかしら。

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